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鈴井貴之著「雅楽戦隊ホワイトストーンズ」 [●BOOK & DVD]

初版 2007.11.30 幻冬舎刊

こういう読みやすい物語をきっかけに
たくさんの人が読書の虜になってくれたらいいな
と思ったりするのだ

[text●h.mariko]

テレビの脚本(水曜どうでしょう)などを手掛けている著者(俳優、タレント、舞台演出家、映画監督、放送作家)の、渾身の書き下ろしである。

「組織」が札幌の白石区にアンテナを仕掛け、電波で今の居住者を追い出し、新しい“白石”を作ろうとする。一方、雅楽を学ぶ仲間、南郷、本郷、北郷が、白石を「組織」から護るために“雅楽戦隊ホワイトストーンズ”となって立ち上がる・・・。

勧善懲悪的な、有り体なストーリーかというと、そうでもない。ローカルヒーロー・ストーリーとでもいうか、これがもしも自分が住んでいる地域が舞台だったらもっと必死になって読んだのかもしれない、と思うと「ローカル」に目を置いた作者の意図は成功している。

携帯電話がコレだけ普及しているけど、電波が身体に及ぼす影響だとかは未だに解らない。地方自治体の安全も「神話」のままで、蓋を開けてみれば自治体まかせのずさんなものが多い。親と子の関係がうまくいっていないどころか、家族同士で殺し合ったりしてしまう悲しい事件も現実にたくさん起きている。
そういうことをさらりさらりとストーリーに織り込みながら、物語も転々と転がしているのは放送作家ならではの手腕だろうか。

読みやすいのは歓迎なのだが、そのぶんなんかこう、薄いのである。もうちょっとメインテーマみたいなのが絞り込まれてたらいいんじゃないかなと思うところがあった。
でも、こういう読みやすい作品を手に取ったのをきっかけに、たくさんの人が読書の虜になってくれたらいいな、と思ったりするのだ。

雅楽戦隊ホワイトストーンズ

雅楽戦隊ホワイトストーンズ

  • 鈴井貴之著
  • 幻冬舎
  • 2007/12
  • 単行本

雅楽戦隊ホワイトストーンズ (幻冬舎文庫)

雅楽戦隊ホワイトストーンズ

  • 鈴井貴之著
  • 幻冬舎(幻冬舎文庫)
  • 2010/04
  • 文庫

雅楽戦隊ホワイトストーンズ [DVD]

雅楽戦隊ホワイトストーンズ

  • ハピネット・ピクチャーズ
  • DVD
■cast 
鈴井貴之(南郷進/悪の秘密結社首領)
安田顕(本郷隆)
佐藤重幸(北郷誠)
大泉洋(大門通)
松村咲子(大谷地ひばり)
ほか



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福井晴敏著「亡国のイージス」 [●BOOK & DVD]

初版 1999.08.25 講談社刊
2000年 第53回日本推理作家協会賞受賞
2000年 第18回日本冒険小説協会大賞
2000年 第2回大藪春彦賞受賞

2005年 阪本順治監督で映画化

それぞれの思いを持った主人公たちを見るうち
自分の矮小さが嫌になるほど、彼らに心奪われる

[text●h.mariko]

この本を手にしたとき、帯に書かれた“著者の最高傑作を完全映画化!” などという文句を観て、えー絶対無理、と思った。
タイトルにもなっている「亡国」という言葉を深く理解しないことには、映像化したって何の意味もないんじゃないかと、個人的には思ったのだ。

戦艦とか、兵器を観るとワクワクしてしまう人もいると思う。
だが待て。
確かに戦艦とか、戦車はカッコいい。
制服をびしっと着こなした海兵隊や自衛隊の迷彩服も、カッコいい。
だが、待て。
あれは、誰かを傷つけることを前提として、訓練を行なっているのだ。

もしも、今、日本が戦争を起こしたら、または巻き込まれたら、誰が戦地に赴くのだ?
自衛隊? それはそうかもしれない。だが、「国を護る」という発想を持った全国民がそれをする、日本が過去に起こした戦渦のように日本の歯車がおかしな噛み合い方をしたら、今これをのほほんと読んでいるあなたや私が誰かを殺しに行くかもしれないのだ。それが戦争だ。それが自衛隊や、兵器の本当の姿だ。

「おもしろい」と評することだけが褒め言葉ではない。 
この本は、ちっともおもしろくない。 
全神経を集中させて読まないと、ストーリーの流れに置いていかれそうになる。 
それぞれの思いを持った主人公たちを見るうち、自分の矮小さが嫌になるほど、彼らに心奪われる。 
「おもしろい」と表現するより、ものすごいのだ、とにかく。 
政治やら特殊部隊やら海上自衛隊やら、自分の生活のフィールドにはおよそ関係のないところで繰り広げられる物語であるが、その無関心さこそがこの国を亡国に導く、作者はそこを説きたかったのかもしれない。 
事実、この本に描かれたことが現実に起こったなら。 
私はここに生きてはいまい。 
あまりに印象的な朝鮮系工作員のセリフが胸に刺さるようだった。 
組織を大きく広く取り上げているのに個人が埋没せず、それぞれのキャラが立っているのも魅力。 
のしかかるような筆力に、最後はページをめくる手を止めることができなかった。ぼたぼた落ちる涙も、止めることができなかった。 
読み終わった本を閉じて、ふとみた表紙が「夜の海」であることに気づいた。
せっかく止まっていた涙が、またぼたぼたと垂れてしまった。

穏やかに凪いだ海は、如月行の新しい人生の始まりだと信じたい。

亡国のイージス

亡国のイージス

  • 福井晴敏著
  • 講談社
  • 1999/08/25
  • 単行本

亡国のイージス 上 (講談社文庫)

亡国のイージス 上

  • 福井晴敏著
  • 講談社(講談社文庫)
  • 2002/07/16
  • 文庫

亡国のイージス 下(講談社文庫)

亡国のイージス 下

  • 福井晴敏著
  • 講談社(講談社文庫)
  • 2002/07/16
  • 文庫


亡国のイージス [DVD]

亡国のイージス

  • 阪本順治監督作品
    • ジェネオン エンタテインメント
    • DVD
■cast 
真田広之(仙石恒史)
勝地涼(如月行)
寺尾聰(宮津弘隆)
佐藤浩市(渥美大輔)
原田芳雄(梶本幸一郎)
中井貴一(溝口哲也)
吉田栄作(竹中勇)
安藤政信(山崎謙二)
ほか


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伊坂幸太郎著「重力ピエロ」 [●BOOK & DVD]

初版 2003.04.20 新潮社刊
森淳一監督作品として映画化(2009年5月23日公開)

ただでさえインテリジェンスな言葉が飛び交い
頭がこじれてきそうななか、色濃く漂う“男っぽさ”
“男”だからこそわかる、“プライド”みたいなものが
この作品からはぷんぷんにおいたつのだ

[text●h.mariko]

ものすごく個人的な感想から入って申し訳ない。
私は、この作家が、結構、苦手である。どうしてって? それは上手く言えないのだ。
たとえば、冷凍グリーンピースが嫌いってことなら、具体的にあれこれ説明ができる。味といい食感といい、ああ、口の中が気持ち悪くなる。冷凍グリーンピースを語り倒して、聞いている相手が嫌いになるくらいに語り倒せる自信が、私にはある。(まあ、どうしょもないことだが。)
だが、この作家のいいところ、というか、この作品のおもしろみを語れ、と言われると、なぜか口籠ってしまうのだ。喉元くらいまで出てきそうなのに、引っ張りだせない。もどかしさだけが残る。

具体的な感想を、この作家にはなぜか持てないのだ。
それでも、なぜ読んでしまうのか、といえば、 それは、やはり魅力的だから、なんだろうか。

父親が違う兄弟、泉水と春。ふたりをめぐる物語である。

この作品だけを取り上げて思ったこと、それは“男”なのである。
たとえば、大変下品な比喩で申し訳ないが、私は股間を蹴り上げられる痛みは微塵も解らない。その苦痛も、辛さも、ちっとも。だって、女なんだもん。
たぶん、それと同じように、“男”だからこそわかる、“プライド”みたいなものが、この作品からはぷんぷんにおいたつのだ。それは強く。

ダーゥインやロシア文学、マハトマ・ガンジーの言葉の引用など、ただでさえインテリジェンスな言葉が飛び交い頭がこじれてきそうななか、色濃く漂う“男っぽさ”。それはどんなにジーンズをカッコ良く着こなそうと思っても、カッコつけて煙草をふかしても、(女の私にとっては)到底追いつけないような距離感を感じるものだった。

言葉遊びや会話のテンポがとてもよく、哲学的なことを語りつつも物語自体が硬直せずにいるのは恐らく作家の素晴らしき手腕であろう。

二度三度と読み返してみたくなる作品ではある。
そのころには、得意の“冷凍グリーンピース批評”並みに、いやもっと、うまくこの作品を語りたいと、思う。

重力ピエロ

重力ピエロ

  • 伊坂幸太郎著
  • 新潮社
  • 2003/04
  • 単行本

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ

  • 伊坂幸太郎著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2006/06/28
  • 文庫

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ
電子版

  • 伊坂幸太郎著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2006/07/01
  • Kindle版

重力ピエロ 特別版 [DVD]

重力ピエロ
特別版

  • 角川エンタテインメント
  • DVD
森淳一監督
2009年5月23日劇場公開(日本映画)

■cast 
加瀬亮(奥野泉水)
岡田将生(奥野春)
小日向文世(奥野正志)
鈴木京香(奥野梨江子)
吉高由里子(夏子)
岡田義徳(山内)
渡部篤郎(葛城由紀夫)
ほか





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長嶋有著「猛スピードで母は/サイドカーに犬」 [●BOOK & DVD]

初版 2002.01.30 文芸春秋刊
「サイドカーに犬」2001年 第92回文學界新人賞受賞作品
「猛スピードで母は」2002年 第126回芥川賞受賞作品
根岸吉太郎監督作品として映画化(2007年6月23日公開)

持ってるヤツは何か持ってるのだ
ジンクスとかじゃなくて、幸せになれるきっかけを!
この作品を読んで実感した

[text●h.mariko]

両方とも読みたいと思っていた作品。中編が1冊にまとまっているとは思わず、手に取ったときは思わずにやけてしまった。

長嶋有の文章は、ザラリとしているのだが、ときどき刺さるように冷たかったりして、ぎくりとしてしまう。それがまた病みつきになるのだが。

「サイドカーに犬」では、家出したひと夏の思い出を、子どもの目線で描く。父のところに来ていた「洋子さん」についての描写がリアルで、母親以外の「異性」を意識しつつもどこかで甘えたがってるようなやんちゃさがあって、とても可愛らしいのだ。
文中にも出てくるのでハッキリ言ってしまうが、洋子さんはまあ、父の後妻というか、不倫相手というか、子どもにとっては扱いづらい存在なのである。なのに、洋子さんがそれをちっとも気にせずに子どもたちに接する姿がなんともいえず清々しいのである。
母親はどこいったとか、倫理的にどうたらとか、そんな小さなことが気にならないのがかえっておもしろいのだろう。

「猛スピードで母は」では、北海道で暮らす母と慎(まこと)との距離感をリアルに描く。男の子どもには父親が必要、なんて声を時折耳にするが、まあこれを読んでみてほしい。ハッキリいって、必要ない。
これを書いている私自身が女性なので思うことなのだが、女は子どもを産む前から、育てる前から、もっとハッキリいえば身籠ったときから、誰の子なのかわかる。だが、男はどーでもいい。
自分で産めば、必ず“自分の子”なのだ。それがわかるのは女性の特権であり、ついて回る責任なのであろう。

両作を通じて思うのが、ふらふらしていそうでも信念みたいなものを曲げない生き方を描くのが、この作者は本当にうまい。気持ちのぶれを感じないので、読んでいて、すかっとするのであろう。

ところで、「フォルクスワーゲン・ビートルの黄色いヤツを3台続けて見ると幸せになれる」というジンクス(?)を、私は子どものころ本気にしていて、黄色でなくともフォルクスワーゲン・ビートルを見つけると小躍りしたものだったが、この作品を読んで実感した。持ってるヤツは何か持ってるのだ。ジンクスとかじゃなくて、幸せになれるきっかけを。
それがほしかったら、ぜひとも、読んでみてほしい。

猛スピードで母は

猛スピードで母は

  • 長嶋有著
  • 文藝春秋
  • 2002/02
  • 単行本

猛スピードで母は (文春文庫)

猛スピードで母は

  • 長嶋有著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2005/02
  • 文庫


「サイドカーに犬」根岸吉太郎監督作品として映画化
2007年6月23日公開


サイドカーに犬 [DVD]

サイドカーに犬

  • ポニーキャニオン
  • DVD
■cast 
竹内結子(ヨーコ)
松本花奈(近藤薫)
ミムラ(近藤薫/20年後)
谷山毅(近藤透)
川村陽介(近藤透/20年後)
古田新太(近藤誠)
鈴木砂羽(近藤良子)
温水洋一(増田治五郎)
樹木希林(増田トメノ)
椎名桔平(吉村)
ほか







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山田詠美著「風味絶佳」 [●BOOK & DVD]

初版 2005.05.15 文芸春秋刊

着古したTシャツやジーンズみたいに
私の一部になっていくような快感
それこそが、山田詠美の文章につきまとう
素晴らしき付属品である

[text●h.mariko]

私は、自他共に認める、読書ジャンキーである。
どんなに荷物が増えようが、絶対に本は1冊、鞄に入っている。
それがハードカバーだろうが、1000ページ(!)を越える文庫本だろうが、今読みたい! と思ったものに重力は発生しないのだ。満員電車に押し込められようが、泥のような疲れに嵌ろうが、読書欲は削がれることがない。むしろ、本が手元にないと、不安になってしまうのだ。ジャンキー所以たるところか。

そんな私の唯一の苦手ジャンル、それが「恋愛」である。
なんのことない、私が恋愛音痴だからである。
人気作家と呼ばれる人たちの本を手に取ってみたことも多々ある。が、どうもしっくりこなかった。きっと、時期と相性が悪かったのだろう、と、思うことにしている。

それが、最近になって、開眼した。正に視野が開ける、というやつである。
それをさせてくれたのが、この山田詠美なのである。

十数年前から、ひと言ずつではあるが読書記録のようなメモをつけている。ここのレビューも、それを参考に思い出しながら書いたりすることもある。自分でつけただけあって、当時のさまざまな思い出が一緒に入っていたりして、それだけで数時間楽しめたりする、続けててよかったなあと思うひとつである。

ところがそれが・・・。この「風味絶佳」の読書記録、こともあろうに、白紙なのである。というか、未練がましく、タイトルの横に→を引いて、「もいちど」と、走り書きしてあった。どうやら、気にはなったらしいのだ。だが、しっくりこなかったので、そのうちまた読んでやる、と思ったらしいのだ。6、7年前のことだ。

そうして「そのうち」が、やってきた。
なぜ、6、7年前の私はこれだけの作品を「→もいちど」にできたのであろうか?!
タイムスリップができるなら、この作品を初読している自分のところに行って、いろいろ話しかけてやりたい気持ちでいっぱいである。ああ、これもあれもそれも話してやりたい。むずむずしてきた。

「風味絶佳」は、短編集である。しかも、私が苦手としていた恋愛がすべてのベースとは言い難い。その道の“職人”たちが、諸雑事をこなしながらする、恋愛、といったスタンスで描かれているのである。
それは鳶職であったり、引っ越し業者であったり、塵処理のプロであったり、さまざまである。

要するに、仕事や、衣服、食事と同じように、恋愛も日常茶飯事なのだ。
我々は、“美男美女が素敵に恋に落ちて素敵な恋愛をしてどうのこうの”というインプリンティングを受けているように思う。いや、そういう作品が悪い、というのではない。むしろ、そこだけを強調し過ぎて浮いてしまうのが、私の肌には合わなかったのだ。
なんだろう、このしっくりとした感じ。着古したTシャツやジーンズみたいに、私の一部になっていくような快感。

そう、快感。それこそが、山田詠美の文章につきまとう素晴らしき付属品である。

ゆっくりと時間が取れるときに、お茶でも用意して、ほどよく陽の当たる昼下がりにでも、まったりと読む。正に、風味絶佳。

風味絶佳

風味絶佳

  • 山田詠美著
  • 文藝春秋
  • 2005/05/15
  • 単行本

風味絶佳 (文春文庫)

風味絶佳

  • 山田詠美著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2008/05/09
  • 文庫

中江功監督
2006年9月劇場公開

■cast 
柳楽優弥(山下志郎)
沢尻エリカ(渡辺乃里子)
大泉洋(所長)
濱田岳(尚樹)
岩佐真悠子(ヨウコ)
サエコ(沙絵)
佐藤二朗(豊田)
板倉俊之(村松)
高岡蒼甫(矢野)
夏木マリ(グランマ)
ほか


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朱川湊人著「都市伝説セピア」 [●BOOK & DVD]

初版 2003.09.25 文藝春秋刊
2002年 第41回オール讀物推理小説新人賞受賞作品「フクロウ男」収録
2006年 フジテレビ系「世にも奇妙な物語 秋の特別編」で「昨日公園」ドラマ化
2009年 W0WW0Wで「フクロウ男」「アイスマン」「死者恋」ドラマ化


長くなく、短くなく、とても
適切なのである。そして、怖気立つでもなく
絶叫でもなく、恐ろしいのである

[text●h.mariko]

短編集。それぞれの世界がふうわりと繰り広げられ、飽きない。独り語りのように描かれた作品が多いのだが、それがまたうまい。
変に語り口調を使うといかにも“作り事”に思えてしまうこともあるのだが、朱川氏にそれは感じなかった。むしろ、なんというか、人の日記や秘密をこっそり覗き見ているような後ろめたさを感じたのだ。なんというか、罪悪感があるのだけど、それ以上にある快感というか、かなり、“マズい感じ”を受けたのである。それだけ、世界観が構築されている作品なのである。

ホラー作品として紹介されていたが、背筋が寒くなるような恐怖感ではなく、やんわりとした口調で語られて、最後の最後で崖から突き落とされるような衝撃があるものが多い。よって、後味が強烈である。タイトルどおり、都市伝説をさまざまな角度から眺めているような気分になる物語が多かった。

「友達を作ってあげる」という、「アイスマン」。
事故死した友達を救えなかったことを悔やむ主人公の体験譚の「昨日公園」。
自分自身が都市伝説になりたいと思ってしまった人の狂気を描く「フクロウ男」。
亡き作家に恋をしたふたりの女のゆく末を描く「死者恋」。
大阪万博で見た月の石の思い出と生き様が交差する「月の石」。

どれもこれも、秀逸なのである。長くなく、短くなく、とても、適切なのである。そして、怖気立つでもなく、絶叫でもなく、恐ろしいのである。ちょっと新しい形の、ホラーのような気も、読み終わった今なら感じる、そんな気がするのである。

都市伝説セピア

都市伝説セピア

  • 朱川湊人著
  • 文藝春秋
  • 2003/09/23
  • 単行本

都市伝説セピア (文春文庫)

都市伝説セピア

  • 朱川湊人著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2006/04
  • 文庫

都市伝説セピア【DVD】

都市伝説セピア

  • TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • DVD
■cast 
フクロウ男
成宮寛貴(佐伯武彦)
永井杏(下校中の女子高生)
桑江咲菜(脅かす女子高生)
坂本恵介(脅かす男子高生)
米光隆翔ジャングルジムの主)
ほか
 
アイスマン
入江甚儀(カズキ)
松元環季(ノンコ)
佐野史郎(カズキ/大人)
長江英和(ノンコの父)
筒井巧(カズキの父)
ほか
 
死者恋
原沙知絵(野島久美子)
いしのようこ(三ヶ崎しのぶ)
余貴美子(鼎凛子)
荒木宏文(朔田公彦)
加藤虎ノ介(結城)
佳那晃子(公彦の母)
ほか


■cast 
昨日公園
堂本光一(陽介)
山崎樹範(隆男)
原田夏希(典子)
ほか


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佐藤多佳子著「しゃべれどもしゃべれども」 [●BOOK & DVD]

初版 1997.08.30 新潮社刊
2007年 平山秀幸監督で映画化

実直すぎるような感情のぶつかり合いが
嫌味のない人間性を鮮やかに描き出す

[text●h.mariko]

人様に、何か自慢できることがないか? と自問したとき、私はひとつ思い浮かぶことがある。
“しゃべることが得意”ということ。
学生時代はたいして気にならなかったが、どうやらかなりの人が人の前に出て発表することや、何かをしゃべらなきゃいけないときにはものすごく緊張するらしい。
仕事やアルバイトの面接然り、仕事につきもののプレゼン然り。
鈍感なのかなんなのか、私はありがたいことに(?)そういうときにほとんど緊張しない。いや、ドキドキするくらいのことはあるのだが、むしろなんかやらかしたろ、くらいの気持ちで挑むようにしている。そうするとあとで大概言われること、“堂堂としてるねえ”。そういうわけではないのだが、まあ、そう取ってもらえるならよしとしよう、と思っている。

さて。そんな、“しゃべること”に物語の主題が向けられた本作。ただのおしゃべりではない、プロの噺家(落語家)を主人公にした小説である。

噺家の今昔亭三つ葉は、前座よりちょっと上の二ツ目。落語は得意なのだが、江戸っ子よろしく、なんでもすっぱり言い切ってしまう性格が災している、まあちょっと損な人。そんな三ッ葉に、あがり症で可哀想なくらいに人が苦手な従弟でテニススクールに勤める綾丸良が、“なんとかしてくれ・・・”と泣きついてくる。そうこうしているうちに、美人なのに口べたなために失恋ばかりしている十河五月に頼られて、三つ葉は“しゃべり方教室”を開くことになった。そしてそこに“悩める人びと”が押しかけ・・・。

しゃべりのプロとしてのプライド、落語のありかたについての問答、さまざまに話を盛り上げながらも、ちょっぴり恋愛っぽい気持ちが見え隠れする。実直すぎるような感情のぶつかり合いが嫌味のない人間性を鮮やかに描き出して、読後感もスッキリな一冊。

しゃべれども しゃべれども

しゃべれどもしゃべれども

  • 佐藤多佳子著
  • 新潮社
  • 1997/08
  • 単行本

しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

しゃべれどもしゃべれども

  • 佐藤多佳子著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2000/05
  • 文庫

しゃべれども しゃべれども 特別版 (初回限定生産2枚組) [DVD]

しゃべれどもしゃべれども
特別版/初回限定生産2枚組

  • 平山秀幸監督
  • 角川エンタテインメント
  • DVD
■cast 
国分太一(今昔亭三つ葉)
香里奈(十河五月)
松重豊(湯河原太一)
森永悠希(村林優 )
八千草薫(外山春子 )
伊東四朗(今昔亭小三文)
ほか





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戸梶圭太著「溺れる魚」 [●BOOK & DVD]

初版 1999.11.20 新潮社刊
堤幸彦監督で映画化 2001年2月公開

ヤクザ、公安、警察
それぞれの思惑が飛び交い
話はあっちこっちへとすっ飛んでゆく

[text●h.mariko]

“これぞ完璧なる娯楽小説!”
そんな帯に惹かれて手に取ってみたのだが。

ふたりの“罪を犯した刑事=万引きと横領”に言い渡された指令は、公安のエリート刑事の動向を追うという、不穏な空気漂う仕事であった。その公安の刑事が追う別の人物。“溺れる魚”と名乗る、謎の人物・・・。
人の弱みにつけ込むようなじわじわとくるからめ手は真綿のように首を絞め、いつのまにか物語にのめり込まされることになる。
ヤクザ、公安、警察、それぞれの思惑が飛び交い、話はあっちこっちへとすっ飛んでゆく。そのめまぐるしい変化と多い登場人物にも関わらず、話の線をブレずに軽い文体のままで話はぐんぐん進んでいく。

いわゆる“普通の人”が出てこない物語である。個性豊か、といえばそれはそれなのだが、まあ、とにかく、ぶっ飛んでいる。
ラスト数10ページの話の展開の早さとめまぐるしさは、とにかくついていくのに精一杯、そしてドタバタグチャグチャの世界はものすごく、とにかく誰が何をやっているのか理解するのでいっぱいいっぱい。ラストにバタバタ死んでいく人々といい、まあとにかくいろんな意味で規格外な感じはする。
一応、ハッピーエンドと取れるようなラストはキレイにまとめられ、これだけ広げた大風呂敷をきちっと納めた物語はさすが。
完璧なる娯楽小説なのかどうかは正直わからないが、気になるようなら、ご自身で確かめられたい。


溺れる魚 (新潮ミステリー倶楽部)

溺れる魚

  • 戸梶圭太著
  • 新潮社(新潮ミステリー倶楽部)
  • 1999/11
  • 単行本

溺れる魚 (新潮文庫)

溺れる魚

  • 戸梶圭太著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2000/12
  • 文庫


溺れる魚 [DVD]

溺れる魚

  • 堤幸彦監督
    • h.m.p
    • DVD
■cast 
椎名桔平(白州勝彦)
窪塚洋介(秋吉宗貴)
仲間由紀恵(相川真紀)
IZAM(岡部哲晃)
渡辺謙(御代田警視正)
勝部演之(保坂峰太郎)
伊武雅刀(石巻修次)
宍戸錠(エースのジョー)
野際陽子(教祖)
白竜(沢木)
成宮寛貴(渋沢泰人)
田口理恵(由美)
ほか






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