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今野敏著「わが名はオズヌ」 [●BOOK]

初版 2000.10 小学館刊

読んでいて心地よいというか
そうだよね、そうこなくっちゃねと主人公たちを
いつのまにか応援しながら読んでいる

[text●h.mariko]

小説の意義とは何か。
私は小説が大好きで、しょっちゅう読んでいるが、それによって何かが劇的に変化したりとか、環境が変わったりすることはまずない。むしろ、子どものころはもっと些細なことで感動sできたのに、このころはそれさえも薄まっている気がする。おもしろくないオトナとやらになってしまっているのだろうか、いささかショックである。

そんなことはさておき。
小説の意義、そのひとつを考えついた。
とても簡単な現実逃避ーー。
マイナスな意味ではない。自分では体験できないことを感じさせてもらえる、それが小説の楽しみ方のひとつである。現実には起こりえないようなことも、小説だからとさらりと読めてしまう。それが突飛であるほうが、そしてそれが爽やかにさらりと読めるほうが、好感度が高い。
この作品は、まさにそういう感じだったのである。

問題児の巣窟と化している南浜高校をつぶして住宅地にする計画が持ち上がっているなか、生徒のひとり加茂晶が自殺未遂をして息を吹き返したら“オズヌ”と自称し、人が変わったようになってしまったのである。
荒んだ高校、街の変化から土建工事の癒着まで話は広がり、オズヌはその不思議な力で人々をいさめ、また説きながら進み問題はひとつひとつと解決してゆく。

ハッピーエンド、というか、悪は罰せられ善は助かるという正に勧善懲悪に近いストーリーなので、読んでいて心地よいというか、そうだよね、そうこなくっちゃねと主人公たちをいつのまにか応援しながら読んでいることに気がつく。
役小角(えんのおづの)と加茂氏(賀茂氏)、秦氏の関係、冶金師、余福伝説、渡来人とその信仰。興味の尽きない話が繰り広げられ、これまた説得力がそれなりにある方法で話が納められることがすごい。
日本の歴史に振り回されるが、解説がていねいなので話に強引さもなく、描かれていることを知らなくてもちゃんとストーリーを理解しながら読み進められるところは高感度高し。

よき世の中とはよき政(まつりごと)が行なわれるべきであり、それを執り行う長の人格や政治姿勢が問われている、というような言葉が散見されたが、今のこの暗い話題ばかりの世の中にもちょうどいいではないか。
現実にオズヌは現われてはくれないかもしれないが、この本をよむことで、心の中が少しだけ変わるかもしれない。

わが名はオズヌ

わが名はオズヌ

  • 今野敏著
  • 小学館
  • 2000/09
  • 単行本

わが名はオズヌ (小学館文庫)

わが名はオズヌ

  • 今野敏著
  • 小学館 (小学館文庫)
  • 2003/09
  • 文庫


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古処誠二著「ルール」 [●BOOK]

初版 2002.04.55 集英社刊

戦うことの意義。生きることへの執着
そこに絡みついてくる戦争の理由
何のために戦い誰のために闘いがあったのか
その意味を深く抉りながら問いかけてくる

[text●h.mariko]

戦争、と聞いて、まずあなたは何を思うだろうか。
拳銃ぶっぱなして、人が蜂の巣みたいに穴だらけになって、累々と積み重なる死体。
最近は兵器もどんどん性能を上げているらしい。細菌兵器とか、毒ガスとか、特定の人だけを狙った兵器だとか。人を殺すことなんて、簡単なのだ。
合法的に人殺しをしてもよいとされる場所、それが戦場。戦争。
悲しいかな、世界中のどこかで戦争は起きている。人が人を憎み、殺し合う理由とはいったいなんなのだろうと考えるほどに世界の広さと自分の小ささを感じてしまうのだ。

そんな戦争について、多少の知識は持っているつもりだった。
日本が過去に起こした、一連の「戦争」についてだ。きっと、あなたも学校の授業で習っていると思う。テストにも出たんじゃないか? 何年に何戦争が勃発、その理由は、とか。

その悲惨さ、甚大な被害、すべて後から知ったことだ。私はその時代に生きていないのだから、無論のことなのだが。
それを敢えて体験したいとは思わない。そしてそれをまた体験するような世界にも生きたくないと思う。
だが、戦争の意味とは、とぐさりと突きつけられてしまうと、動けなくなってしまうのだ。
この作品は、まるで喉に突きつけられたナイフのように鋭利だ。

戦うことの意義。生きることへの執着、そこに絡みついてくる戦争の理由。
日本の降伏がもう少し早ければ、東京大空襲も、沖縄の上陸戦も、そして広島長崎への原爆投下も避けられたかもしれないと聞く。

しかし、降伏宣言がなされたことすら知らない“現地”の兵士たちは、戦い続けたのだ。もはや意味が失われたことすら知らず。極限状態のなかで。
何のために戦い誰のために闘いがあったのか。その意味を深く抉りながら問いかけてくる本作は、大変に、読むのが辛い。

だが、目をそらさずに読み通したい。
そして、考えてほしい。
自分の倫理観はどんなものだろうか?
その倫理観で考えてほしい。
戦争は、必要だろうか?


ルール

ルール

  • 古処誠二著
  • 集英社
  • 2002/04/05
  • 単行本

ルール (集英社文庫)

ルール

  • 古処誠二著
  • 集英社(集英社文庫)
  • 2005/07/20
  • 文庫




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絲山秋子著「海の仙人」 [●BOOK]

初版 2004.08.30 新潮社刊
2005年 第55回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞

海辺でひっそり暮らす勝男と
そこに現われた役立たずの自称“神様”、ファンタジー
そしてふたりの女、片桐とかりん・・・
哀しく美しいソリチュード

[text●h.mariko]

この作品を、恋愛小説、と区分けしたら、怒られるだろうか。いや、区分けなんて本当は必要ないんだ。それはわかってる。
たとえば人にこの作品がどれだけいいものかを伝えたいんだけど、わかりやすい言葉で噛み砕いて伝えないと伝わりそうになかったら、やっぱり、恋愛小説、って言うのがわかりやすいと、思ってしまうのだ。とても、浅はかな表現なのだが。

敦賀の海辺にひとりで暮らす勝男。ある日、勝男のもとにファンタジーがやってくる。ファンタジーである。こいつが、滅茶苦茶いいのだ。俗にいうところの“神”とか“聖霊”とか、そういう信仰の対象みたいな人(?)なんだろうけど、「そうだ、私がファンタジーだ」なんていう人なのだ。初めて見た。

勝男は片桐という元同僚にべた惚れされているのだけど、敦賀で出逢った部長こと中村かりんと親しくなっていく。
どんと落ち着いた雰囲気だからあだ名が部長のかりんも可愛いし、べた惚れの男に媚びたくなくて赤いアルファロメオ乗り回して「カッツォ(イタリア語の卑語らしい)」と好きな男を呼んじゃう片桐も実に可愛い。
が、物語はほんわかムードを保ってくれない・・・。

ファンタジーが見える人と、見えない人、出逢ってすぐにファンタジーとわかる人と、わからない人が、どうもいるようだ。
この物語では、ファンタジーはそこにいるだけで、何もしない。いや、何もできないのかもしれない。彼の存在そのものが、ひょっとすると過剰なもの、生きるという最低限の行動のなかでは必要ない存在かもしれないものなのだ。だが、ここに出てくる主人公たちの生き様とファンタジーとの交流を思うと、じゃあ生きるための最低限ってなんだよ、と思えてくる。

そうだ、やっぱり小さいテーマとかジャンル分けなんて必要ない。
敦賀の海に想いを馳せながら、さざ波の音を聴きながら、ページを捲ってほしい。

海の仙人

海の仙人

  • 絲山秋子著
  • 新潮社
  • 2004/08/28
  • 単行本

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人

  • 絲山秋子著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 発売日: 2006/12/22
  • 文庫

海の仙人 (新潮文庫)

海の仙人
Kindle版

  • 絲山秋子著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2007/01/01
  • Kindle版

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島村洋子著「ザ・ピルグリム」 [●BOOK]

初版 2005.04.25 中央公論新社刊

大切な人をしっかりと守り通すには
自分自身が、もっともっと強くならなければならないし
周りを見渡す余裕が必要なのだ、としみじみ感じた

[text●h.mariko]

両親が離婚の相談をする間に四国のお遍路ツアーに放り込まれる少年、直人。
動物園の閉鎖に伴い、動物を“処分”することができずに、キリンのダーニを連れて逃げる飼育員の夏子。
前の夫との生活が嫌になり、トラック野郎と再婚するも田舎生活に嫌気がさしている浩美。
脚フェチの夫といろんな意味でヤバい状態の春香。
娘が消えてから自分を喪っている高橋夫人。

さまざまな人が、さまざまに交差しながら進んでいくストーリー

自分が生きることとはフィールドを守ることであったりいろんな人のことを考えなくてはならなかったり面倒なこともたくさんあるけれど、大切な人をしっかりと守り通すには、自分自身が、もっともっと強くならなければならないし、周りを見渡す余裕が必要なのだ、としみじみ感じた。

いろんな人のいろんな気持ちがぐるぐる回る、最終的な着地点は明るい未来という感じで、読みやすくライトに楽しめる作品。

ザ・ピルグリム

ザ・ピルグリム

  • 島村洋子著
  • 中央公論新社
  • 2005/04/25
  • 単行本




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古川日出男著「サウンドトラック」 [●BOOK]

初版 2003.09.10 集英社刊

でも、でもなのだ。現実ってヤツは
そんなに重たいのか? そんなに、大切なのか?

[text●h.mariko]

1月14日、天気予報どおり、関東(私が住んでいる町)は、雪景色に覆われた。
地球全体が温暖化しているとか諸説あるが、何故か成人の日には、ここ数年雪景色を眺めることが多い気がする。

この雪景色がまったく見られなくなったら?
日本が、常夏の国になってしまったら?
そんな“とんでもない”ことを前提に、この物語は幕を開ける。

離島(無人島)でふたりっきりで暮らしていたトウタとヒツジコは、本人たちの意思とは関係なく、街へと連れてこられる。ふたりの目に映る、大都会トーキョー
2009年、日本は熱帯気候の国となり、東京は多国籍の街に変わり、オークボや神楽坂ではアラブ系の人々がひしめくように暮らしている。
そして、急増する外国人に対する排斥運動の裏で動く、トウタ、ヒツジコ。レニ、烏のクロイ・・・。


我々がよく知っている地名がちらほらと出てくるのに、そこに日本的情緒は喪われ、まるで違う国のことを語られているような違和感が、徐々に病みつきになる。
主人公それぞれの眼差しを通したスリリングな展開も息が詰まるような緊張感があり、まさに息つく間もない。

読者を二分する物語であることは間違いない、気がする。
古川日出男の文章センスはなんというかずば抜けているので、その“抜け方”についてこられない人は、残念ながらこの作品には触れ難いかもしれない。

でも、でもなのだ。
現実ってヤツは、そんなに重たいのか? そんなに、大切なのか?
物語ってヤツは、大抵がフィクションだ。だから、どうしたっていうんだ?

そんなふうに開き直ってしまえば、これほどにおもしろい本は、ない。

タイトルこそ「サウンドトラック」ではあるが、これは「無音」を描き出した作品ではないか、と思うのだ。トウタ、ヒツジコ、それぞれの主人公がつくりだす、究極の無音の世界。それが、この作品の真骨頂なのではないか。

示唆的な文章であるがため、さまざまな読後があるだろう。
それぞれにあって、当然だろう。

だから、こういう人のことをきっと天才っていうんだ、世の中は。

サウンドトラック

サウンドトラック

  • 古川日出男著
  • 集英社
  • 2003/09/05
  • 単行本

サウンドトラック (上) (集英社文庫)

サウンドトラック (上)

  • 古川日出男著
  • 集英社(集英社文庫)
  • 2006/09/20
  • 文庫

サウンドトラック (下) (集英社文庫)

サウンドトラック (下)

  • 古川日出男著
  • 集英社(集英社文庫)
  • 2006/09/20
  • 文庫


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宇月原晴明著「信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス」 [●BOOK]

初版 1999.12.15 新潮社刊
1999年 第11回日本ファンタジーノベル大賞 受賞作品

虚構は虚構として、しかしどこかに
現実感を漂わせながら妖しげに描かれた作品は
怒濤のヴォリューム感とともに
素晴らしい余韻を残してくれる

[text●h.mariko]

本を読むときに、その作家がどのような経緯で本を出版したかをチェックするようになった。デビューした賞の性質などをざっくりとでも捉えておけば、なんとなくでも雰囲気が掴みやすいからだ。

もともと、ファンタジーノベルス大賞を受賞した作家というのは、私好みなのである。なんというか、枠にとらわれない感じがあって、とてもいいのである。
ミステリといったらやっぱり謎解きだ殺人だという“お約束”がついて回るようだが、「ファンタジー」は、人によって感じ方が違うだろう。それを昇華させているかどうかで、この賞は大化けしたりする。なので、とても興味深いのである。

で、この作品、この作家。
なんだこりゃー、が第一声であった。

ファンタジーというか、伝記というか伝奇というか、なんというか、奇怪なのである。これをファンタジーノベルという枠にとらえて受賞させちゃったことが、まずすごい。


1930年ベルリンにて、映画俳優のアルトーの前に現われる日本人青年、総見寺。彼はアルトーの持論=“ローマ皇帝ヘリオガバルスは両性具有の伝説を持つ暗黒の太陽神である”と、日本の戦国武将・織田信長との共通点を語り、信長もまた暗黒の太陽神の申し子であると説く。
ヘリオガバルスと信長、その共通点は牛頭天王を祀っていたこと、霊石を持っていたと思われること。そして両性具有であったこと。
怪しげな語り手である総見寺に徐々に惹かれるアルトーだが・・・。

歴史とは、後世の人が文献や事象、口伝などをもとに推測されていくものである。そのため、正解というのは恐らくない。
だが、この突飛さはなんだろうか?! とにかく、ものすごい発想力なのである。
動物のなかでも唯一、想像力を持つという人間の力を存分に活かした作品。
虚構は虚構として、しかしどこかに現実感を漂わせながら妖しげに描かれた作品は怒濤のヴォリューム感とともに、素晴らしい余韻を残してくれる。

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

  • 宇月原晴明著
  • 新潮社
  • 1999/12
  • 単行本

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス (新潮文庫)

信長―あるいは戴冠せるアンドロギュヌス

  • 宇月原晴明著
  • 新潮社
  • 発売日: 2002/09
  • 文庫






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池端亮著「あるゾンビ少女の災難」 [●BOOK]

初版 2007.09.30 角川書店刊

5世紀分くらいを“死んでからも生き続ける”ようになった少女
ユーフロジーヌと、そのメイドであるアルマ・V
ふたりがおりなすドタバタ劇

[text●h.mariko]

「ゾンビ」という単語が広く知れ渡って、どれくらいになるのだろう。
ファミリーコンピュータファミコンと一緒に育ってきた世代の私としては、ゾンビとかスライムとか言うだけで、頭に絵が出てくる。まあそれは某ゲームキャラクターだったりもするのだが、そういうので市民権を得ている(?)のが彼ら(??)なのだろう。
しかし、実写にとなると話は別。顔の半分が腐ったように溶け、白目は濁り、時に眼球が飛び出し、黄色い乱杭歯を剥き出して襲いかかり、人の臓物を喰い漁る、そして喰われた方もゾンビになってしまう・・・。
そんな映画を直視できるようになったのは、今世紀に入ってからである。つくりごととはいえ、まあキモチワルイのは間違いない。
本作はそんな、ゾンビちゃん(???)が主人公の、作品である。

錬金術によって、5世紀分くらいを“死んでからも生き続ける”ことができるようになった少女、ユーフロジーヌ。そのメイドであるアルマ・V。ふたりがおりなすドタバタ劇である。

彼女の「7代目お父さま」によって、日本の大学に売り飛ばされてしまったユーフロジーヌ。彼女の身体に入っているはずの賢者の石(※錬金術によってつくられる、あらゆる力を持つといわれる石)を学生に盗られてしまう。よって彼女はそれを取り返すことに。
冷血にお嬢さまを守るアルマ。それに比べると大分抜けてるユーフロジーヌ。

正直、物語としては人がおもしろいように死んでいくし(というか主役がもともと死人だ)、むごたらしい描写もあるのだが、まったく恐くない。ぐちゃっとした、ホラーものにありがちな描写も最小限に抑えられていて、軽い。“ココロ優しいゾンビちゃん”というのは、ある意味新しい存在ではなかろうか。
原作者はゲームの脚本を手掛けるなど、さまざまな方面で活躍を見せている。さらりとした読書向け。

あるゾンビ少女の災難

あるゾンビ少女の災難

  • 池端亮著
  • 角川書店
  • 2007/09/25
  • 単行本

あるゾンビ少女の災難 I (角川スニーカー文庫)

あるゾンビ少女の災難 I

  • 池端亮著
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 2012/06/30
  • 文庫

あるゾンビ少女の災難 II (角川スニーカー文庫)

あるゾンビ少女の災難 II

  • 作者: 池端 亮
  • 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 2012/06/30
  • 文庫








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中村航著「リレキショ」 [●BOOK]

初版 2002.12.20 河出書房新社刊
2002年 第39回文藝賞受賞

見せるとこは見せて、見せなくていいとこは
しっかり鍵かけて、そうやって生きてるほうが
おもしろいかもしれない
そう思わせてくれるような、わくわく&ゆるい小説

[text●h.mariko]

履歴書。リレキショ。
今まであまり深く考えてこなかったが、リレキショ、って、結構失礼な存在じゃないか?
あの薄っぺらい、ステレオタイプな物事しか書くことを許されない、写真の大きさまで決められている、あの紙っぺらで、もしかしたら人生が大きく左右されるかもしれないのだ。
人事課の人がどんなに偉いとか人を見る目があるのかとか知らないけれど、あれだけで人を決めるような輩がいたら、私は迷わずぶん殴る。

そう、人の“リレキ”なんてわからないものなのだ。それでいいのではないか。
そんなことを描いたこの作品、小気味よい。
“姉さん”と暮らす“僕”は、“半沢良”という名前。
姉さんの同居人、カッコよすぎてギャクにモテない、ヘヴィスモーカーの“山崎”。
3人の不思議な生活と、良のバイト先に現われる“ウルシバラ”などを中心として物語が回っていく。

「半沢、で行くならよ」とか、「行くも何も、良は良だ。」なんて文章に、けっこう痺れてしまう。

会社のストレスが溜まってる、アナタ。
課長をちょっと斜めから眺めてみてはいかがだろう。
ただの名前で呼んでみて、むしろ、あなただけがつけたあだ名なんかで呼んでみるとよりよいかもしれない。たかが課長、家に帰ればただの夫、父親、オトコ、なのだってことが、見えてはこないだろうか?
肩書きだけがモノをいう奴ら、しょせん小ものなのだ。
こき下ろす必要はないけれど、それに振り回されずに自分自身はしっかり持って、見せるところはちゃんと見せて、見せなくていいところはしっかりと仕舞って鍵をかけて、そうやって生きてるほうが、もしかしたらおもしろいかもしれない。
そう思わせてくれるような、わくわく&ゆるい小説。
息抜きにも、やる気注入にも使えると思う。是非、お試しあれ。

リレキショ

リレキショ

  • 中村航著
  • 河出書房新社
  • 2002/12
  • 単行本

リレキショ (河出文庫)

リレキショ

  • 中村航著
  • 河出書房新社(河出文庫)
  • 2005/10/05
  • 文庫





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桂望実著「死日記」 [●BOOK]

初版 2003.01.10 エクスナレッジ社刊

淡々としていつつも心苦しくなる文章
ただひたすら母親を見守る少年のぶれない目線
それがかえって辛いのだ

[text●h.mariko]

ここ最近、若い年代の自殺問題について取り上げられるニュースをまた頻繁に耳にする。
学校では防止策としていろいろと講じているようだが、どうも詭弁臭い。
それは“死を選ぶほどの辛さ”と“教育の範囲を出ないやり方”のそごであり、限界なのであろうといつも思う。自殺というのは、たぶん、ものすごく辛い。だって、痛いし苦しいはずだ。生存本能ってモノが人間にはたぶん備わっていて、それをも越える“辛さ”が歯止めを振り切ってしまうのだろうと思うと、なんともやり切れない気持ちになる。
そんなとき、いつも思い出すのが、もう10年も前に書かれた、この本だ。

主人公である田口潤(14歳)が、友人である小野に勧められて書いた日記と、陽子という名の女性の回顧を織り交ぜながら進んでいくストーリー
息子と母、というと、伝わらなそうで伝わっている、見えない心のようなものが描かれそうであるが、この作品はその逆を描いているようだ。
息子に無情の愛を注ぐ存在である母親。そのはずの陽子はあくまで“同居する男”の味方であり、潤の存在は二の次三の次。そんなふうに扱われながらも純粋な心を失わずに、むしろ純粋さを突き詰めたように育っていく潤。
物語を読み進めるうち“オチ”は見えてきてしまうのだが、それがまた辛い。
推理小説などにありがちな、“ほーら、やっぱり主人公はこうやって動くんだよね”という先読みがおもしろいほど当たり、それがわかるほどに辛さが増すのである。
淡々としていつつも、心苦しくなる文章というのはあまり思い当たらない。
金という即物的なモノに取り憑かれてしまった母親と、その男である加瀬の存在を認めつつも、母親を見守る少年としての目線がぶれないのが、かえって辛いのだ。

世の中、わけのわからない理由で人が死に過ぎている。自殺を含めての話だ。最近、本当にそう思う。
だが、潤のような生き方ができる人は果たしてどれくらいいるのだろうか? ワラのなかから針を見つけるよりも、難しいかもしれない。

いろんな意味で心が揺さぶられる文章である。
この本を読んで、そして潤を一生忘れないでほしい。友人として彼を支え続けた小野のように、彼の志を、決して忘れないでほしい。そうしたら、なにがあったとしても、自殺みたいな、辛く苦しい選択肢以外を選ぶことができるのではないかと思う。

小説のなかだけの綺麗事としてだけでなく、私もこの物語を心に一生留めておきたい、そう思ってやまない。

死日記

死日記

  • 桂望実著
  • エクスナレッジ
  • 2002/12
  • 単行本

死日記 (小学館文庫)

死日記

  • 桂望実著
  • 小学館(小学館文庫)
  • 2006/06
  • 文庫







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江戸川乱歩著「日本探偵小説全集(2)江戸川乱歩集」 [●BOOK]

初版 1984.10.26 東京創元社刊

それぞれ、幻想的なのだ
哀しみであったり、愉悦(狂気?)であったり
とにかく描かれ方が美しい

[text●h.mariko]

思えば、物心ついて、自分で初めて選んで読んだ本は、江戸川乱歩の「少年探偵団」だった、ように思う。断定できないのは、それが兄が持っていた本だから、それに影響されただけかもしれない、という迷いがあるからだからだ。
しかし、それを実際手に取って、ワクワクしながら読んだ記憶は、朧げにあるのだ。
総ルビの文字。精緻な描写が恐かった挿絵。明智小五郎と小林少年のタッグ、それをかわす怪人二十面相・・・。
子どもが喜びそうな、といってしまえばそれまでかもしれないが、これが1936年にすでに執筆され、それを現代に生きる私たちが読んでも充分に楽しめるというのは、驚異的ではないか?
「大乱歩」と小説家から畏敬の念を込めて呼ばれるわけも、わかる気がする。

そんな江戸川乱歩、大人になってからはあまり興味を持って手に取ったことがなかった。そんなときに限って、好きな作家が「実は乱歩の大ファン」と言うのを見たり、作品が映画化されたり、興味をそそる事件(?)が起きるのだ。そうして、全集ではあるが手に取ってみた。

うわあーーー。

衝撃、である。

設定に、古さを感じない。
発想に、無理を感じない。
強烈に、印象深い。
嗚呼、これが大乱歩の名のゆえんか。

超がつくほど有名なタイトルも多く含まれていたが、個人的に興味を覚えたのは「鏡地獄」「押し絵と旅する男」「芋虫」だった。
それぞれ、幻想的なのだ。偏執的な主人公、というところに共通点があるかもしれないが、哀しみであったり、愉悦(狂気?)であったり、とにかく描かれ方が美しい。
思えば、明智小五郎のようなヒーローもののような作品から、どろりとしたホラーまでを描く幅の広さを持った作家、現在はいるだろうか? 絵本から劇の脚本、小説までさまざまに手がけるなど、マルチな活躍をする人はたくさんいるように思う。だが、江戸川乱歩のように、小説の世界のなかで縦横無尽に描き尽くし、幅広い年齢に支持され、現代でも衰えない人気を保った作家は、いるだろうか、これからも出てくるのだろうか?

乱歩没して、既に百年余過ぎている。
まだ私が手にしていない乱歩作品は、山ほどある。
さあ、どれから手を出そうかと、本の山の前で腕を組み、にやけてしまうのだ。

日本探偵小説全集〈2〉江戸川乱歩集 (創元推理文庫)

日本探偵小説全集〈2〉
江戸川乱歩集

  • 江戸川乱歩著
  • 東京創元社(創元推理文庫)
  • 1984/10
  • 文庫
Title
二銭銅貨/心理試験/屋根裏の散歩者
人間椅子/鏡地獄/パノラマ島奇談
陰獣/芋虫/押絵と旅する男/目羅(めら)博士
化人幻戯/堀越操作一課長殿




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桜庭一樹著「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」 [●BOOK]

初版 2004.11 富士見書房(富士見ミステリー文庫)刊

「愛って絶望だよね」


藻屑の言葉に共感できるる人は
ぜひぜひ読んでいただきたい

[text●h.mariko]

桜庭女史の作品は、読む人を選ぶと思う。
好きな人は、熱狂的に好きなイメージがあり、
ダメな人はまったく受け付けない、などという言葉も聞く。
私は、前者のタイプなのだ。

しかし、この作品。
紹介文を書こうと思い立ったものの、
やはり、やめておこうかと、迷った。
間違いない、万人ウケする作品ではないからだ。

そして、爽やかな読後感も、優しい気持ちもまったくない。
と言い切ってしまうとなんともひどい言い方だが、
なんというか、絶望感と、そこからちょっぴり立ち上がれる力、
それを感じられる人が、どれほどいるのだろうか、
と思ったのだ。

内容についても、多くは語るまい。

女子中学生の山田なぎさと、海野藻屑と、
なぎさ兄と、花名島のお話である・・・。


「愛って絶望だよね」



藻屑の言葉に共感できるる人は、ぜひぜひ読んでいただきたい。

共感できない人は、やめておいたほうがいいと、私は思う。

だが、やはり、紹介はしたいのだ。
読んでみて、ご自身の感覚で、
どう感じるかを試していただければと思う。

OFFICIAL WEB SITEhttp://sakuraba.if.tv/

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない

  • 桜庭一樹著
  • 富士見書房(富士見ミステリー文庫)
  • 2004/11
  • 文庫

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
―A Lollypop or A Bullet

  • 桜庭一樹著
  • 富士見書房
  • 2007/03
  • 単行本

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない  A Lollypop or A Bullet (角川文庫)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない
A Lollypop or A Bullet

  • 桜庭一樹著
  • 角川グループパブリッシング(角川文庫)
  • 2009/02/25
  • 文庫

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上 (単行本コミックス)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 上

  • 桜庭一樹原作, 杉基イクラ作画
  • 富士見書房(単行本コミックス)
  • 発売日: 2008/03/08
  • コミック

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下 (2)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない 下

  • 桜庭一樹原作, 杉基イクラ作画
  • 富士見書房(単行本コミックス)
  • 発売日: 2008/03/08
  • コミック




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井上雅彦監修「玩具館―異形コレクション」 [●BOOK]

初版 2001.09.20(文庫) 光文社刊

身近に大切にしているモノにさえ
ホラーは潜んでいる。それを見つけ出す
作家たちのセンスに拍手

[text●h.mariko]

小説には、さまざまな楽しみ方がある。たった数ページの短編に心躍らされるか。大長編の分厚さにわくわくするか。そのへんは好みが別れるところではあるが、1冊にたくさんの作品が載っている、いわゆるオムニバスは、ちょっとお得な感じがする。
井上雅彦は、とある好きな作家が名を挙げていたことから知った。自身が描いている作品も多数あるが、ホラーアンソロジストとしても有名であることを知ったのはその後である。そして、手に取ってみたのがこの作品。

豪華な執筆陣。内容は、“おもちゃ”に関わること。

子どものころ、いや、べつに現在でも構わないのだが、おにごっこをしたとする。そのとき、たとえば年の離れた子や、女の子が少数だったりとかすると、ローカルルールをつくったりはしなかっただろうか? ちいさな子は、2回捕まえないと、鬼に交代しない、だとか、女の子は逃げる時間を多く取る、だとか。この短編集は、そんな“ルール”に則って、作品が描かれているのだ。

おもちゃといって、想像するものとはなんだろうか。人形? ロボット? ゲーム? 人によってさまざまであろう。人に大切にされたものには念がこもる、などともいう。それだけ愛されるべきものでもあり、不幸な別れ方をしたりすると、モノであるはずのおもちゃに、まるで人格があるかのように扱われたりする。そんな不思議なモノでもあるのだとこの作品を読み通して思った。
ホラーと言い切ってもいいような、不気味な作品。恐いのだが、美しささえ漂う作品。笑っちゃうような、でも後味が苦い作品。よりどりみどりである。

いま、とても大切にしているモノはあるだろうか。なんでもいい、記念に買った時計だったり、バッグだったり。私だったら、たとえばどこにでも連れ歩く、ipod。これが壊れて、恐ろしいうめき声を上げるようになったら・・・。そして、私には後ろめたい過去があって、そのうめき声がそれを糾弾するようなものだったら・・・。
身近に大切にしているモノにさえ、ホラーは潜んでいる。それを見つけ出す作家たちのセンスに拍手、そしてそれを編纂した井上氏にも絶賛を贈りたい。

21012.jpg

_玩具館―異形コレクション

  • _井上雅彦監修/短編集
  • _光文社(光文社文庫)
  • _2001/09
  • _文庫
■収録作品
「お菊さん」飛鳥部勝則著
「猫座流星群」皆川博子著
「よくばり」佐藤哲也著
「弟」加門七海著
「チャチャの収穫」青木和著
「来歴不明の古物を買うことへの警め」雨宮町子著
「フォア・フォーズの素数」竹本健治著
「象牙の愛人」篠田真由美著
「男の顔」田中文雄著
貯金箱」北原尚彦著
「喇叭」浅暮三文著
「ぼくのピエロ」安土萌著
「走馬燈、止まるまで」久保田弥代著
「怪魚知音」飯野文彦著
「タケオ」太田忠司著
「人形の家」村田基著
「愛されしもの」井上雅彦著
「綺麗な子」小林泰三著
「救い主」田中啓文著
「青い月に星をかさねて」浦浜圭一郎著
「未完成の怨み」今野敏著
「瑠璃色のびー玉」江坂遊著
「オモチャ」宮部みゆき著
「女の館」菊地秀行著
「のちの雛」速瀬れい著




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雨宮町子著「たたり」 [●BOOK]

初版 2000.08.30 双葉社刊

人は、いいことをされたことよりも
悪いことをされたことのほうが深く印象を残すという
その象徴ともいえる作品。ああ、恐い恐い

[text●h.mariko]

読後感がすっきりしない作品を好まない方は、まず、手に取ることをやめたほうがいいと、思う。
“たたり”というタイトルどおり、日本独特のホラーというか、染みついてとれない汚れみたいな、べったりとした感覚が常につきまとうような感覚があった。

SF作家である高橋哲哉と妻の佐知子は、友人の持ち物である那須にある“元男爵”が建てた別荘を借りることに。はじめはその建物の広さ、豪華さに感動して、不便さには目をつぶって住んでみることにしたのだが・・・。
ふたりを訪ねてきた友人たちの目に映った夫婦は、まるで別人。上品だった哲哉はよく飲みよく食べ歯をむき出して下品に笑う。佐知子はやつれ、不眠が続いているという。

夫婦は、実は一度子どもを喪っているという設定が出てきて、なんとなく“たたり”の意味が分かってきて・・・。
建築物に憑いた怨念のために不幸を辿ることになる主人公たちは可哀想な気がするが、恨みというのは何年ももっと長い時間が経っても、消えることのない感情なのだろうか。それをいつまでも抱き続けるのは、逆に疲れそうなものだが・・・。
作品のなかですべてを描かず、読者に想像させながら進むストーリーは中毒性が強い。

人は、いいことをされたことよりも、悪いことをされたことのほうが深く印象を残すという。その象徴ともいえる作品。ああ、恐い。

たたり

たたり

  • 雨宮町子著
  • 双葉社
  • 2000/08
  • 単行本

tatari.jpg

_たたり

  • _雨宮町子著
  • _双葉社(双葉文庫)
  • _2002/12/25
  • _文庫本





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森絵都著「風に舞いあがるビニールシート」 [●BOOK]

初版 2006.05.30 文藝春秋刊
2006年 第135回直木三十五賞受賞作品

軽い読書のつもりで手に取って
人生についてちょっと考えてみたりする
そんなきっかけになるかもしれない

[text●h.mariko]

森絵都の作品は、ティーンエイジャー(死語?)向けの作品、 少し年齢設定が低めの作品が多いのだろうかと思っていたが、 これは濃密な大人の生き方指南書である。



恋と仕事を天秤にかける。

拘りを捨てられない。
人に振り回される。

愛する人を喪いたくない。
大人だとか子どもだとかいう前に、人があたりまえにすることをあたりまえに描いている。しかし世の中そうそううまくいかないこともある、そんなとき、どうする? という問題に直面した主人公たち。
変に計算することを知ってしまったがゆえに悩み苦しむ。
しかし計算は本当に必要だろうか? 純粋すぎて、手が抜けなくて苦悩する主人公たちを見ていると そんなふうに思えてきた。
一本通った何かを持った人は強い。

短編集なので、読みやすいボリュームとテンポがとてもよい。
軽い読書のつもりで手に取って、人生についてちょっと考えてみたりするきっかけになるかも、しれない。

UNHCR(国際連合難民高等弁務官事務所)の駐日事務所に勤務する主人公の愛と新たなる歩みを描いた表題作「風に舞いあがるビニールシート」ほか、「器を探して」「犬の散歩」「守護神」「鐘の音」「ジェネレーションX」を収録。

「風に舞いあがるビニールシート」は、吹石一恵主演でNHK土曜ドラマ化。
2009年5月30日から7月4日まで全5回放送。

OFFICIAL WEB SITEhttp://www.nhk.or.jp/dodra/kaze/

風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート

  • 森絵都著
  • 文藝春秋
  • 2006/05
  • 単行本

風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

風に舞いあがるビニールシート

  • 森絵都著
  • 文藝春秋
  • 2009/04/10
  • 文庫

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恩田陸著「中庭の出来事」 [●BOOK]

初版 2006.11.30 新潮社刊
2007年 第20回山本周五郎賞受賞作品

会話で構成された文章は隙がなく
人と人の顔を交互に見比べているような
なんというか、速いラリーのテニス中継でも見ているような
とにかく息をもつかせぬ緊迫感が漂う衝撃作!

[text●h.mariko]

なんだこれは?
   読み始めたときの、感情。

なんだったんだ、これは??
   読み終わったときの、感情。

はっきりいって、解らん。煙に巻かれたような、狐につままれたような感じなのである。ああ、だから、なんなんだ? これがこうなって、あれがこうなって、だから、だからなんなんだ? 誰かハッキリ言ってくれ、教えてくれ!

そう叫びたくなる、何ともいえない読後感。
恩田女史のよく使う手口(?)ではあるのだが、この作品ではそれが顕著なのである。

とある“中庭”を舞台に、ある死んだ劇作家と、そのオーディションを受けていた3人の女優と、殺人容疑をかけられている女と、それを追う刑事の会話で話が進む。ほとんど会話で構成された文章は隙がなく、人と人の顔を交互に見比べているような、なんというかテニスの中継でも見ているような、とにかく息をもつかせぬ緊迫感が漂うのである。
ときおりフォント(書体)が変わって描かれる、男2人が死んだ人の話をしながら舞台へと登る・・・と、“殺人事件”と“舞台”とがリンクする。
たぶん、きっと、あれがこうなんだろう、という憶測はできるのだが、物語のなかでそれがはっきりと明かされることがない。むずむずしたまま、物語は終わりを迎えるのである。
次のページがもうない、と思い、これで物語が終わりだと気がついたとき、思わず、えぇッ?! と声を上げてしまうほど、衝撃的であった。

もやもやとした描かれ方をする“推理”を楽しむもよし、勝手にあれこれともやもやを“想像”するもよし、楽しさは人それぞれ。どうぞ、振り回されていただきたい。

中庭の出来事

中庭の出来事

  • 恩田陸著
  • 新潮社
  • 2006/11/29
  • 単行本

中庭の出来事 (新潮文庫)

中庭の出来事

  • 恩田陸著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2009/07/28
  • 文庫

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小野不由美著「東亰異聞」 [●BOOK]

初版 1994.04.20 新潮社刊
梶原にき作画でマンガ化/2001年10月号〜2003年8月号「月刊コミックバーズ」連載

怪しい煌めきはそのままに、闇は闇のままに
謎や不思議は解かれないからこそ魅力的で
さらに怪しい輝きを放つのだろう

[text●h.mariko]

不思議なことを目撃したら、あなたはどうするだろうか。
不思議なこと、そう、なんでもいい。
柳の下に佇む人影が透けていたとか、空を明るく燃えるような影が横切ったとか、誰もいない部屋から音がしたとか。
私は、ただひたすら、怖がることしか、できない気がする。
ひとりなら。
でも、大勢の人がいたら?
たくさんの人がそれを目撃していたら?
大騒ぎになるだろう。噂になるだろう。噂が噂を呼んで、皆がその虜になるだろう。
人は、自分の知らないことや未知が、意外と好きなものである。

ときは明治維新後、首都(帝都)、東京を騒がす魔性たち。
火焔魔人に闇御前、人魂売りに般若の夜鳴き蕎麦屋。
あるときは人が死に、あるときは人が消える。正に不思議。
帝都日報の記者、平河新太郎と便利屋の万造がその謎解きに挑む。

時代がかった設定どおり、台詞回しに雰囲気づくり、ともによろし。
美しくも怪しげな東京の姿が手に取るように見える文体は一読の価値あり。

謎解き、と書いてしまったが、これは謎解き=ミステリの類いなのかというと、そうではない気がする。
謎は解かれないまま、終わるように思えるのだ。
怪しい煌めきはそのままに、闇は闇のままに。
しかし、謎や不思議は解かれないからこそ魅力的で、怪しいかがやきを放つのだろう。そして、さまざまな人が虜になり、その口の端に登るのだろう。
明治の時代の景色を思い浮かべながら、この世界にゆったりとたゆたってほしい。

東亰異聞 (新潮文庫)

東亰異聞(とうけいいぶん)

  • 小野不由美著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 1999/04
  • 文庫

東京異聞 スペシャル版 1 (バーズコミックススペシャル)

東京異聞 スペシャル版 1

  • 小野不由美原作/梶原にき作画
  • 幻冬舎コミックス(バーズコミックススペシャル)
  • 2008/03/24
  • コミック

東京異聞 スペシャル版 2 (バーズコミックススペシャル)

東京異聞 スペシャル版 2

  • 小野不由美原作/梶原にき作画
  • 幻冬舎コミックス(バーズコミックススペシャル)
  • 2008/03/24
  • コミック





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平山瑞穂著「忘れないと誓ったぼくがいた」 [●BOOK]

初版 2006.02.20 新潮社刊

ライトで、読みやすい。だが、随所に
感情の切なさみたいなものが滲んでいて
すごくきゅんとくるのである

[text●h.mariko]

デビュー作「ラス・マンチャス通信」の印象があまりに強烈だったため、読み始めてすぐに「これはもしや恋愛小説なのでは?」と気がついたとき、ちょっとガッカリした。
だって、恋愛小説って普通じゃん。
ラス・マンチャスみたいなぶっ飛び世界を読みたかったんだけどなあ。そんなふうに思いながら読み進めたのだが。

ちょっと、泣いちゃった。のである。

メガネショップに行った葉山タカシは、そのときに対応をしてくれた“織部”さんに一目惚れをしてしまう。そして、彼女はなんと同じ高校に在籍していることがわかり、大興奮! そして下の名前が”あずさ“でああることを突き止め、さあこれから・・・と言うとき、思わぬ障害にぶちあたる。
あずさは、ときどき、“消えてしまう”のだ。
あずさは、今までも何度も“消えた”ことがあり、そのたびに人に忘れられることがあり、過干渉するたび自分が傷ついてきたのでタカシともあまり仲良くしたがらない。だが、タカシは必死になり、あずさが消えない方法を考える。

文章はとてもライトで、読みやすい。だが、随所にタカシの感情の切なさみたいなものが滲んでいて、すごくきゅんとくるのである。
男子のために尽くす女子、というのは一般的にありがち(?)なような気がするが、タカシがあずさのためにまさに“尽くして”いる姿は健気である。
ラストまで漂う切なさを、ああ、これって青春だよなあ、とか思いながら、ハンカチで涙拭いながら読んだのである。人を大切に思うって、単純な感情なようでいて、とても重要なものであることを気づかせてくれる良作であった。

忘れないと誓ったぼくがいた

忘れないと誓ったぼくがいた

  • 平山瑞穂著
  • 新潮社
  • 2006/02/20
  • 単行本

忘れないと誓ったぼくがいた (新潮文庫)

忘れないと誓ったぼくがいた

  • 平山瑞穂著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2008/07/29
  • 文庫

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中村文則著「土の中の子供」 [●BOOK]

初版 2005.07.30 新潮社刊
2005年 第133回芥川龍之介賞受賞作品

人は人と繋がらないと生きていけないのか?
繋がらないといけないのは弱いからなのか?
弱いというのはひとりでいることか?
では、孤独な人はすべてが弱いのか?

[text●h.mariko]

短編「蜘蛛の声」を併録。

現実=生きることから目を背け切ったことが共通したような2編なので、続けて読むと、かなり鬱々とした感情に襲われる。
表題作では、人間から“人”を切り離して生きようとする人を描く。よって、タイトルのように“土”と密接に絡むことになる。
「蜘蛛の声」ではある日突然外出できなくなる人が描かれる。
トーンが暗く、読みづらい部分もあるかもしれない。が、全体を通じて感じるテーマは“逃げる=生きる=弱い=強い=”という、矛盾した感情であった。
人は人と繋がらないと生きていけないのか? 繋がらないといけないのは弱いからなのか? 弱いというのはひとりでいることか? では孤独な人はすべてが弱いのか?
そんな問いかけが聞こえてくるようであった。
逃げること、それは一般的には弱いものがすること、そしてあまりよくないことであると言われがちである。だが、どうしても逃げなきゃいけないときというのがあるだろう。そのときに正々堂堂と逃げるのも、ひとつの生き方なのである。
ひたすらに暗く湿った感覚のある文章が綴られているが、語られていることは、“生き方”や“在り方”を見失った現代の若者に、ぜひ知ってもらいたいと思った。

まあ、ひょっとすると、余計に凹むかもしれないけれど。

土の中の子供

土の中の子供

  • 中村文則著
  • 新潮社
  • 2005/07/26
  • 単行本

土の中の子供 (新潮文庫)

土の中の子供

  • 中村文則著
  • 新潮社(新潮文庫)
  • 2007/12
  • 文庫


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伊島りすと著「ジュリエット」 [●BOOK]

初版 2001.07.17 角川書店刊
2001年 第8回日本ホラー小説大賞受賞

ホラーというと肩透かしを食う気がする
ファンタジーだと思って読み進めてみると
新しい発見ができるかもしれない

[text●h.mariko]

日本ホラー小説大賞受賞作ということで、手にしてみる。

・・・ホラーか、これ?

たとえばぐちゃぐちゃのドロドロのゾンビに追いかけ回されて絶叫しまくって、っていう設定だったり、目に見えないなにやらよくわからない存在に襲われて命の危険が迫って、っていうことだったり、まあ何やら目を背けたくなるようなシーン続出、というイメージがあるのだ、ホラーっていうのは。

が、この作品は、おとなしい。というより、静かなのである。
密やか、とでもいうべきか。

妻をうしない、その散骨を考えていた主人公は、仕事で離島に行くことが決まり、ふたりの子どもを連れて居住を移す。そこで息子にせがまれて獲った貝が死ぬ“タマヌケ(魂抜け)”を目撃したせいで、彼らの周辺に不思議な出来事が起こりはじめ、そうして島の伝説のとおり、死んだ人が還ってくることになるのだったが・・・。

タマヌケという現象の不可思議さや美しさをもっと追求してほしいなと思ったのと、ホラーというならもう少し驚きやら恐怖感があってもよかったのだろうか、と思うところがありながらも、もやっとした進み方のまま、ラストを迎える。
すごくいいとか、悪いとかいうわけではないのだが、このもやっとした感じがこの作品の胆なのかな、と思えばそれでもいいのかな、と思えた。
死んだ人との邂逅を望むのは、大切な人をうしなった人たちの当然の感情といえよう。だがそれは叶わぬ夢、それをいくら願ってもおそらく叶わない。そんな切なさを、もうちょっと突っ込んで書いてくれてもよかったのかな、という気もする。

ホラーというと肩透かしを食う気がするので、ファンタジーだと思って読み進めてみると、新しい発見ができるかもしれない。

ジュリエット

ジュリエット

  • 伊島りすと著
  • 角川書店
  • 2001/07
  • 単行本

ジュリエット (角川ホラー文庫)

ジュリエット

  • 伊島りすと著
  • 角川書店(角川ホラー文庫)
  • 2003/09
  • 文庫





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佐藤亜紀著「ミノタウロス」 [●BOOK]

初版 2007.05.10 講談社刊
2008年 第29回吉川英治文学新人賞受賞作品

物語としての完成度がとにかく高い。それに尽きる
まるですぐそばで息遣いが聞こえるような生々しさ、近さ

[text●h.mariko]

日本を中心に物事を考えることが多い。いや、あたりまえなのだ、だって私は日本人なのだから。政治や暮らし向き、趣味や衣食の文化、それは外から見れば“日本的”と評されるものであっても、日本に暮らす私にとっては“特別”ではなく、“あたりまえ”になってくる。
ニューヨーカーの全員がお洒落なのかどうか知らないし、パリには美男美女ばかりなのかどうかも知らない。韓国では足がキレイな人が多いとか、もはやそういうのは都市伝説(?)みたいなものだと思うのだ。

佐藤女史が舞台に選ぶ場所は、たいがい知らない国や土地が多い。良く言うと先入観なしで読める。悪く言うと、自分がバカになったように思える・・・、いや、勉強不足ってヤツなのだと思うが。この小説は第一次世界大戦直前のウクライナが舞台。私は“ウクライナってどこ?”と思いながら読み進め、途中から地図帳に手を伸ばした。

大国・ロシアとのせめぎ合い、ヨーロッパの圧力を受けつつも自国の力を誇示しようとどの国もが考えていたであろう、この時期。ロシア革命を目前にしたロシアの爆発力を押さえようとするウクライナ、それに巻き込まれる群衆、兵士。そのなかのひとりが主人公というと、ぴんと張りつめた緊張たっぷりの世界を想像しがちだが、それがそうでもない。主人公がヒーローじゃないところが、またおもしろい。

タイトルになっている“ミノタウロス”をご存知だろうか? ギリシア神話に登場する牛頭人身の怪物である。その姿もさることながら、破壊力を持った暴君のイメージが強い神である。
それをタイトルに持ってきている割には、誰がどう“ミノタウロス”なのだろう? と思いながら、読み進んだ。
すると話は複雑になり主人公は暴走をはじめ、大富豪に擦り寄り生きていた主人公が彼を撃ち、野に放たれるあたりから本領発揮。ラストまで息をつく間もなく走り抜ける。まるですぐそばで息遣いが聞こえるような生々しさ、近さ。

物語としての完成度がとにかく高い。それに尽きる。
余談だが、地理に疎い方は、最初から地図帳を手に本書を開くことをお勧めする。

ミノタウロス

ミノタウロス

  • 佐藤亜紀著
  • 講談社
  • 2007/05/11
  • 単行本

ミノタウロス (講談社文庫)

ミノタウロス

  • 佐藤亜紀著
  • 講談社(講談社文庫)
  • 2010/05/14
  • 文庫

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白石一文著「永遠のとなり」 [●BOOK]

初版 2007.05.30 文藝春秋刊

鬱と癌、やるせない人生の淵に立たされた
ふたりの主人公の対照的な考え方や物言いが
坂道を転がる雪玉のように
大きく重くのしかかってくる・・・

[text●h.mariko]

生きる理由なんてものを、考えたことがあるだろうか? 生きているということがあたりまえであり、明日の寝床も飯も困らぬ生活をしているぶんには、そんなこと気にするわけがない。誰もがそうだろう。しかし、現在の日本は、なかなか全員がそういう“あたりまえ”を享受できていないのが現状だ。病気、怪我、馘首、不幸。そんなスパイラルに陥っている人も、たくさんいるのだ。

うつ病を発症し、仕事を退職、妻子とも別れて故郷、福岡に帰った主人公の精一郎。癌と闘いながら、結婚離婚を繰り返すその友人、敦。小学校から親友であるふたりの対比と、その“生き方”を透かし彫りにしたような作品である。

物語なのだ、と思えるゆとりというか、幅がもてない。もしも自分がこうなったら? というリアルな感情を持ちながら読み進めると、ふたりの主人公の対照的な考え方や物言いが、坂道を転がる雪玉のように、大きく重くのしかかってくる・・・。

自分がどうやって生きるのか、その道筋など、実は誰にもわかりはしない。だれもがそれをつねに模索しながら生きていくものなんだろう。しかし、うつ病によって生きる気力を剥奪されたり、癌によって希望を失ったりすることは、マイナスにはなってもプラスにはなり得まい。どんなに苦しくてもとにかく現状を見失わない、人の強さというか、マイナスからでも生み出せる力というか、とにかく、目を背けずにいる強さが必要な内容である。
タイトルは恐らく、誰もが避けては通れない現象を指しているのだろうけど、それを慌てず騒がず受け止められるようになる人など、いるのだろうか・・・。それは強さでなく、悟りなのだろうか、と、いろいろと考えさせられる機会をもらうことになった。

永遠のとなり

永遠のとなり

  • 白石一文著
  • 文藝春秋
  • 2007/06
  • 単行本

永遠のとなり (文春文庫)

永遠のとなり

  • 白石一文著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2010/03
  • 文庫

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皆川博子 著, 宇野亞喜良 画「絵小説」 [●BOOK]

初版 2006.07.30 集英社刊

甘美であり、エロティックであり
不気味であり、恍惚である
万華鏡のような
幾ら見ていても飽きない世界

[text●h.mariko]

この「絵小説」は、“絵本”と“小説”、
それを絶妙に混ぜ合わせた作品である。

普通、という言葉が適切かは解らないのだが、
小説にイラスト(挿し絵)が入るときというのは、
まず最初に物語があり、
それに合ったイラスト(挿し絵)をつけていくものだろう。

しかし、この作品では順序が逆であったという。
逆というか、まったく新しい手法でつくり上げられた。

まず、皆川博子がコクトーなどの詩を選び、
その詩からイメージした絵を宇野亞喜良が描き、
皆川博子がその詩と絵から物語をつくり、言葉を添える。

そうして出来上がった「絵小説」。

甘美であり、エロティックであり、
不気味であり、恍惚である。

それぞれの世界観がお互いを引き出し合い、高め合う。
なんたる世界。

例えるなら甘すぎるデザート
胃もたれを起こしそうな美食、
なんというか、贅沢なのである。

万華鏡のような、幾ら見ていても飽きない世界。

「赤い蝋燭と・・・」「美(うるわ)しき五月に」
「沼」「塔」「キャラバン・サライ」「あれ」の6篇を収録。

絵小説

絵小説

  • 皆川博子 著, 宇野亞喜良 画
  • 集英社
  • 2006/07/26
  • 単行本

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京極夏彦著「絡新婦の理」 [●BOOK]

百鬼夜行シリーズ第5作(ジョロウグモノコトワリ)
初版 1996.11.05 講談社刊(講談社ノベルズ)


あまりに悲しいラストには
胸を引きちぎられるような感情が溢れた
それは、やはり自分が女性だからなのか
それとも・・・

[text●h.mariko]

日常生活において、自分の性別を意識することはあるだろうか。女である私は、なにかと、ある。たとえば、結婚したら仕事はできないのか、とか、毎月生理痛に悩まされるときだったりとか、社会において男女は対等だと言われながらも正社員のクチがなかなかないというときであったりとか。そう、何かと女性は蔑視されているような意識がある。それは自意識過剰なのかもしれない。だが、実際男女差というのはあるのだ。そう意識をしていなくとも。
性差はあたりまえに存在ている。男性が力強く、女性には力がないのはただの性差である。それを混同してしまうと、差別が起きる。区別と差別は違うのだ。そして婚姻をいわゆる“家制度”と繋げて考えようとするから矛盾が起きるのだ。そこに深いメスが入らない限り、女性性が今よりもよく捉えられることはないだろう。

京極堂シリーズ(百鬼夜行シリーズ)において、正直、いちばん厄介に感じているのが、この作品である。女性の性差撲滅、独立した女性を生み出すためにという発想と、それと真っ向から対立する家制度が屹立し物語を分断する。どうしてこんなに解りにくいのか。それは、実は、女性である私が、“女であるが故の差別”ということを、熱心に考えたことがないからではないかと気がついた。

場所は、千葉のはずれである。大層な素封家で葬式が出る。織作家の主の葬式であった。偶然にその近くまで釣りにやって来た伊佐間一成は、葬式を目撃する。同時に、水鳥の友禅を羽織った“男のようなもの”を目撃し、ぞっとする。
一方、聖ベルナール女学院では、2年生の呉美由紀と渡辺小夜子が、「蜘蛛の僕」について調べるうちに危険な組織へとのめり込む羽目に。
また一方では、世間を騒がせる「目つぶし魔」が登場、目玉にノミを突きつけるという強烈な殺人手法で世の注目を集める。さらに同時期に、別の地域では「絞殺魔」なるものが現われて・・・。

この物語を終息させるには、ここまでの人が犠牲にならなくてはならなかったのだろうかと、読み返すたびに思うのだ。
自分自身が生きる道を見いだせない人生など、どうあがいても楽しくはなるまい。だからといって、自分自身の保身のために、大勢の人の命を犠牲にしてよいものか。それだけの覚悟がないと、女性の独立は果たすことができないのか。
あまりに悲しいラストには、胸を引きちぎられるような感情が溢れた。それは、やはり自分が女性だからなのか。それとも、女性性をどこかで差別しているからなのか。
幾ら考えても、まだ答えが見つからない。

絡新婦の理 (講談社ノベルス)

絡新婦の理 (講談社ノベルス)

  • 京極夏彦著
  • 講談社
  • 1996/11/05
  • 新書

文庫版 絡新婦の理 (講談社文庫)

絡新婦の理

  • 京極夏彦著
  • 講談社 (講談社文庫)
  • 2002/09/05
  • 文庫

分冊文庫版 絡新婦の理(一) (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理(一)

  • 京極夏彦著
  • 講談社
  • 2006/01/13
  • 文庫 (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理(二) (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理(二)

  • 京極夏彦著
  • 講談社
  • 2006/01/13
  • 文庫 (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理 (三) (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理 (三)

  • 京極夏彦著
  • 講談社
  • 2006/02/16
  • 文庫 (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理 (四) (講談社文庫)

分冊文庫版 絡新婦の理 (四)

  • 京極夏彦著
  • 講談社
  • 2006/02/16
  • 文庫 (講談社文庫)

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篠田節子著「ハルモニア」 [●BOOK]

初版 1998.01.01 マガジンハウス刊
1998年 堂本光一、中谷美紀でテレビドラマ化(日本テレビ系 全9回)

東野と由希が辿る運命は
残酷にして儚いとも思えるが
やっぱり、これは愛の話・・・
チェロが奏でる美しくも悲しい物語

[text●h.mariko]

私は、音楽をものすごい愛している、と、ときどき思う。外出時にipodを忘れてしまったときに猛烈に後悔したり、映画を観にいって物語そっちのけで音楽に浸って泣いたり、ふいに好きな音楽を聴いて号泣したり、はたまたらい落に笑えたり、そんなことを繰り返しているうちに自分というものを形成してくれた音楽に、感謝してもしきれないほどの感情を抱いている。

この物語は、音楽とチェロという楽器を中心にした、美しくも悲しい物語である。
チェロ奏者の東野は、深谷の依頼で由希にチェロを教えることとなる。
由希は、脳の一部を損傷した、いわゆる障害者。普段の生活はままならないほどに感情がないが、とりわけ音楽のこととなると天才的な能力を発揮する。それは、チェロを弾かせてみると顕著に現われた。
東野は由希の演奏テクニックに、ルー・メイ・ネルソンという異端児であったチェリストの姿を重ねるように。ネルソンは脚光を浴びつつも、夭折した演奏者であった。
東野は必死にネルソンの音を取り出そうとしているかのように見える由希から、“彼女だけの音”を出させようと必死になる。
脳の手術による、変化。東野の感情の変化。そして、由希の変化・・・。

音楽と愛情は、深いところで繋がりがちである。心に深く沈み込む音楽こそ名曲といえるだろう、それと同じことだ。東野と由希が辿る運命は、残酷にして儚いとも思えるが、やっぱり、これは愛の話なのではないか、と、思うのである。

ハルモニア

ハルモニア

  • 篠田節子著
  • マガジンハウス
  • 1997/12
  • 単行本

ハルモニア (文春文庫)

ハルモニア

  • 篠田節子著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2001/02
  • 文庫

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ユン・チアン著「ワイルド・スワン」 [●BOOK]

原書名「WILD SWANS( 鴻 - 三代女人的故事)」著者 Jung Chang(張戒)/1991
初版 1993.01.25 講談社刊

否が応でも深いつき合いになってゆく中国
激動の近現代史を深く認知しておくべきではないか

[text●h.mariko]

私が高校生のころ、学校の図書室に司書さんがいた。もともとの本好きであった私は司書さんとの出逢いにより、さらに本の世界にのめり込むこととなり、今まで自己流でチョイスしていた本から専門家からさまざまな紹介をしてもらえるという、大変ぜいたくな読書生活を送っていた。

そのころ、司書さんはこの本を、私に猛烈に勧めてくれた。だが、私は読まなかった。当時の私はどっちかといえばアメリカの作者にハマっていて、もともとノンフィクションものは苦手で、“中国”という国そのものにあまり興味がなかったのが、その原因だ。

あれから十数年が経ち、どうしてこの本に手が伸びたのかは、わからない。最近何かと世界情勢を騒がせる中国に興味を持ったからなのか、それとも久々に海外の著作を読みたくなったのか、はたまたノンフィクションに興味を持ったからなのか。

読み終えての結論。高校のとき、読んでおかなかったことを激しく後悔した。ーーいや、あのころだったら、歴史認識やら何やらで面倒になり、途中で投げ出したかもしれない。今読むのが、やっぱりタイミングとしてはよかったのかもしれない。

作者であるユン・チアンから見た中国の歴史を彼女の家族の生活と、中国共産党との関わり、そして文化大革命について、毛沢東の方針についてを冷静な眼差しで見つめ、精緻な筆で書き抜かれた作品である。
著者本人、母親、祖母が、それぞれ辿ってきた歴史。それは戦争、日本の支配、国内の内戦、そして文化大革命と激動の中国を辿ることだ。その当時の中国は、情報統制がなされ、なかなか国内情勢を海外に流さない。それはよくも悪くも国民の生活に影響しており、果たして“文化大革命とはなんだったのか?”と歴史研究家も首をひねることが多いらしいと、この本を読んでから知った。そういった意味で、中国の歴史を内側から告発するかのように描いたノンフィクションは、衝撃である。

中国は、最近こそGDPの急上昇、世界一の人口大国としても大きく成長している。そんな国が辿ってきた歴史を、我々は知らなすぎるのではないか。これからも“アジア”という枠組みでも“世界”という枠組みでも、つき合っていかなければならない中国。直接的に関わる政治家や官僚や企業人ばかりではなく、一般人の我々も、中国の激動の近現代史を深く認知しておくべきなのではないか、と、思った。否が応でも深いつき合いになってゆくわけで。

ワイルド・スワン(上)

ワイルド・スワン(上)

  • ユン・チアン著
  • 講談社
  • 1993/01/19
  • ハードカバー

ワイルド・スワン(下)

ワイルド・スワン(下)

  • ユン・チアン著
  • 講談社
  • 1993/01/19
  • 単行本

ワイルド・スワン〈上〉 (講談社文庫)

ワイルド・スワン〈上〉

  • ユン・チアン著
  • 講談社 (講談社文庫)
  • 1998/02
  • 文庫

ワイルド・スワン(中) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(中)

  • ユン・チアン著
  • 講談社 (講談社文庫)
  • 1998/02/26
  • 文庫

ワイルド・スワン(下) (講談社文庫)

ワイルド・スワン(下)

  • ユン・チアン著
  • 講談社 (講談社文庫)
  • 1998/02/26
  • 文庫

Wild Swans: Three Daughters of China

Wild Swans
Three Daughters of China

  • Jung Chang
  • Touchstone
  • 2003/08/12
  • ペーパーバック


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小川洋子著「ミーナの行進」 [●BOOK]

初版 2006.04.25 中央公論新社刊
2006年 第42回 谷崎潤一郎賞受賞作品

病弱のミーナはお嬢さま、朋子は普通の子ども
ふたりの少女が次第に心の距離を縮め
お互いを思いやる人間に成長してゆく姿を
ゆったりとした目線で追う

[text●h.mariko]

現実感に遠いのだが、童話のようなファンタジックさはなく、なんだか不思議な感覚をたゆたわせるのがほんとうにうまいと、小川女史の本を読むたびに唸る。

兵庫県の芦屋に住む伯母に預けられることになった中学1年生の朋子。そこで待ち受けていた生活は、それまでの岡山での暮らしとは全く違った世界であった。喘息のために外に出られない1歳年下の従妹、ミーナのためにあるような世界。

見たこともない洋館に住むということ。
ミーナを背中に乗せるコビトカバのポチ子の存在。
ミーナがつくるマッチ箱での物語。
ミュンヘンオリンピックでの日本の活躍、
その影にあった陰謀。
夢のような海水浴。
ミーナの代わりに行く図書館。
そのカウンターでの、淡い恋心。

けれど、何の変哲もないといえばそうかもしれないような毎日を、朋子の視線から淡々と描いていく・・・。

時代背景を考えたら、ミーナは相当のお嬢さまで、朋子は別段普通の子どもである。それがひとつ屋根の下で暮らす間にココロの距離を縮め、お互いを思いやる人間に成長してゆく姿をゆったりとした目線で追っているところが、この作品のよさだろうか。読み終わって、ミーナと朋子が、数十年後、お互いの環境が変わっていても、再会を楽しんでいる姿が目に浮かぶような、そんな幸せな感覚の残る作品である。

ミーナの行進

ミーナの行進

  • 小川洋子著
  • 中央公論新社
  • 2006/04/22
  • 単行本

ミーナの行進 (中公文庫)

ミーナの行進

  • 小川洋子著
  • 中央公論新社
  • 2009/06
  • 文庫

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大崎善生著「タペストリーホワイト」 [●BOOK]

初版 2006.10.30 文藝春秋刊

生の危うさと死の確かさ
闇の中を歩くような惰性で生きる人生をよしとせず
すべてを見極めようとする強い眼差し

[text●h.mariko]

西暦が2000年になるとき、なんだか感慨深いものがあった。いや、べつに1000年前を知っていたわけではない。だが、そんな歴史的に貴重な体験、なかなかないと思うのだ。元号が変わるのとは違う。日本だけの数え方ではないのだ。ミレニアム(1000年紀)を世界中が祝っていたのを、今でも思い出す。きっと何かが変わる(!)と思った。青春ど真ん中だった。
だがそれも、あっというまに12年が過ぎた。その間、あのころみたいなワクワクを感じたことがあったろうか、と思うと、ない、と答えざるを得ない。世界的な不況は深化し、情勢が不安定な国々があり、戦争は相変わらず世界のどこかで起きている。平和なわけがない。

そんな、“今”を生きる私は、1970年代初頭の若者が辿った道を知らない。
60年代後半にはじまった学生運動は全共闘となり70年安保闘争を飲み込むも、日米安全保障条約の自動継続を受けて失速、70年代に入ると過激派だけが残り、内ゲバ、リンチ殺人を引き起こす・・・。そのなかに身を投じた姉、希枝子の死を見つめるため、同じ道を辿る洋子。
生の危うさと死の確かさ。闇の中を歩くような惰性で生きる人生をよしとせず、すべてを見極めようとする眼差しが強い。
キャロル・キングが1971年に発表したアルバム「タペストリー」に綴った物語との繋がりが、希枝子と洋子姉妹の物語を深くしてゆく・・・。

人の生死を分けるものはいったいなんなのか。若者たちのたぎるエネルギー、主張を声高に叫ぶこと、熱狂、社会情勢と生き方の寄り添い方。物事が深く交錯するほど、悲しさが膨らむ。あのころを知らない世代として、一言一句を噛み締めながら読んだ。

タペストリーホワイト

タペストリーホワイト

  • 大崎善生著
  • 文藝春秋
  • 2006/10
  • 単行本

タペストリーホワイト (文春文庫)

タペストリーホワイト

  • 大崎善生著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 発売日: 2009/10/09
  • 文庫

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大崎善生著「ドナウよ、静かに流れよ」


Tapestry

Tapestry

■Track listing
01. I FEEL THE EARTH MOVE
02. SO FAR AWAY
03. IT'S TOO LATE
04. HOME AGAIN
05. BEAUTIFUL
06. WAY OVER YONDER
07. YOU'VE GOT A FRIEND
08. WHERE YOU LEAD
09. WILL YOU LOVE ME TOMORROW?
10. SMACKWATER JACK
11. TAPESTRY
12. (You Make Me Feel Like) A NATURAL WOMAN
13. Out In The Cold/bonus track
14. SMACKWATER JACK(Live)/bonus track













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粕谷知世著「アマゾニア」 [●BOOK]

初版 2004.10.25 中央公論新社刊

アマゾネスの暮らしを
まるで伝記のような緻密さで描く
その文章の美しさと
じっくり、時間をかけて向き合ってみたい

[text●h.mariko]

アマゾネスという、伝説の部族をご存知だろうか。女性だけで構成された、戦闘に長けた人々。弓を巧みに操るという。その弓を引き絞るときに邪魔になる右の乳房を切り落としたという伝説さえあるほどなので、その戦いに対する覚悟は相当のものである。
子を産むときは他部族の男のもとに行き、交った。男児が生まれた場合、殺す。あるいは父親のもとに引き渡す。女児のみを後継者として育てた筋金入りの女性戦士たちといわれている。
そんな、アマゾネスの暮らしを緻密に描いた本作。

16世紀。部族ごとに異なる習慣を持って暮らしているアマゾン川のほとり。“泉の部族”の大弓隊長である赤弓は、アマゾネスを束ねる女戦士である。彼女は部族たちがよくあるようにと力をつくしているのに、守護精霊“森の娘”は身勝手に振る舞うし、“亀の部族”の腰は重く、“鰐の部族”は何を考えているかわからない。宿敵である“オンサの一族”を滅ぼしたところに、新たな民族が迎え入れられる。それは開拓という名目で占領にやってきたスペイン人。彼らの出現で、男子禁制の“泉の部族”に男が連れ込まれることになり、秩序は乱れる・・・。

伝説とは、語り継がれるなかで姿を変え形を変えながら今に伝えられるものであろう。ゆえに、必ず真実とは限らない。だが、そのおおもととなる何かがあったからこそ、伝説は残るのである。赤弓という戦士が実在したかはわからない。だが、ここに語られる彼女ら彼らの姿はあまりにリアリティに溢れ、とても絵空事とは思えない存在感がある。まるで、友達みたいな親近感すら覚える。赤弓は戦士としてリーダーとしては素晴らしいが、女性としてはとても不器用。夢見鳥や影の三つ子など、名前もキャラクターも個性的で飽きない。女性はたおやかに、子を産み育てるのが仕事とされることが多い世の中に、このような勇壮な人々がいたのかと思うと心躍る。

伝記のようであり創作の物語と思えない緻密さで描かれるこの作品は、ひとつの歴史書のようだが、その文章の美しさで小説であることを思い出させてくれる。誰も見たことのないアマゾネスを生き生きと描き出した秀作。2段組500ページの長編、じっくり、時間をかけて向き合ってみたい。

アマゾニア

アマゾニア

  • 粕谷知世著
  • 中央公論新社
  • 2004/10
  • 単行本

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粕谷知世著「クロニカ 太陽と死者の記録」






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近藤史恵著「アンハッピードッグズ」 [●BOOK]

初版 1999.10.07 中央公論新社刊

さらりと読めて
やんわりというか、ふんわりというか
ふわっとした気持ちのよい読後感

[text●h.mariko]

恋愛小説、なのだが、なんだろう、この感じ。
やんわりというか、ふんわりというか。
恋愛小説独特の、ギスギスしたやりとりとか、カップルの不和とか、周りから見たふたりとか、そういう“もどかしさ”が、この作品からはほとんど感じられない。

フランスで生活しているマオ(真緒)とガク(岳)の部屋に、新婚旅行中に荷物を盗られてしまった浩之と睦美が同居することに・・・。
それぞれのカップル同士の関係がことこまかに描かれるわけではないのだが、さらりとした描写の中に脆く崩れそうな“2組のカップル”が浮き彫りになる。
長くつきあってるから、いいわけではない。
結婚したから、それも、いいわけではない。
じゃあ、本当にいい関係ってなに?
そんな示唆を含みながら、危なっかしい4人の心境がちりばめられた物語。

近藤女史はこの作品で恋愛を初めて扱ったそうだが、そうとは感じないほど手慣れた感じがするのが不思議。
フランスの街の情景、地名があたりまえのように出てくるので、まるでその街を散歩しているかのような錯覚を起こすリアルな文章も、生活感が滲み出る。
柴犬の弁慶が4人を上手く取り持つのだが、それがものすごく可愛い。犬は人の心がわかる、なんて言うけれど、この作品での弁慶は正にそれに当てはまる。
睦美とマオのそれぞれ違う“女らしさ”になるほど、と思ったり、ガクと浩之の“悩み”にまた同感したり。親近感の湧く作品である。

大きな事件があるわけでもないけれど、さらりと読めて、ふわっとしたこの気持ちのよい読後感は、是非とも味わっていただきたい。

アンハッピードッグズ

アンハッピードッグズ

  • 近藤史恵著
  • 中央公論新社
  • 1999/10
  • 単行本

アンハッピードッグズ (中公文庫)

アンハッピードッグズ

  • 近藤史恵著
  • 中央公論新社(中公文庫)
  • 2001/10
  • 文庫

アンハッピードッグズ (ポプラ文庫)

アンハッピードッグズ

  • 近藤史恵著
  • ポプラ社
  • 2011/02/04
  • 文庫(ポプラ文庫)

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皆川博子著「伯林(ベルリン)蝋人形館」 [●BOOK]

初版 2006.08.30 文藝春秋刊

あたかも実際に“その時代”を見てきたような文章には
いつもながらに舌を巻く。純文学とか歴史ミステリーとか
そういった枠を飛び越えたスケール観を持つ作品

[text●h.mariko]

ロンド、というか、輪廻、というか。ひとつの大きな輪があり、それをぐるぐると回るような、そんな不思議な魅力を放つ作品だ。

舞台は1920年代のドイツ
国粋者として生きてきたが、
終戦とともにジゴロに堕ちたアルトゥール
アルトゥールを慕う、脚本家を夢見る少女、ナターリャ。
戦中にアルトゥールに助けられた恩を返すべく、
彼を探し求めるフーゴー。
フーゴーを運転手に雇い、後に大富豪となるハインリヒ。
麻薬中毒でありながら、素晴らしい蝋人形を作るマスティス・マイ。
すべての人々の人生に浅く深く関わっている謎の女、ツェツィリエ。

それぞれの主人公を置いた章が微に入り細に穿った描かれ方をするも、その章で主人公が死んだり、または海外に行ったりもする。なのに、次の章ではまた普通に生活している彼(または彼女)が描かれるのだ。めまぐるしく変わる世界観に振り落とされぬようついていくのが、やっと。

若く志しに燃えた人々が、戦争という絶望に飲み込まれ、また人生を狂わされ、そこからまた生きるためにあがく、そういってしまえば簡単なのだが、そのキャラクターが生きているのか死んでいるのかさえわからないような書き方に、読み手は籠絡される。

同じ時代、時間を生きている人は、同じ時間を共有しているはずだ。だが、それは本当に“同じ”なのだろうか? 時間という目に見えない流れに翻弄され、その濁流に飲み込まれた人々の姿を読み勧めるうちに、読者も同じように翻弄されていることに気がつく。

これは文学作品なのだろうか。それとも、歴史書? あたかも実際に“その時代(ナチス台頭直前の1920年代のドイツ)”を見てきたような皆川女史の文章はいつもながらに舌を巻くが、まるでベルリンの作家が書いた作品を日本語訳したような、そのわりには優美な日本語が目にとまり、言葉を追うだけでも美しさを感じ取れる。純文学とか歴史ミステリーとか、そういった枠を飛び越えたスケール観を持った作品である。

伯林蝋人形館

伯林蝋人形館

  • 皆川博子著
  • 文藝春秋
  • 2006/08
  • 単行本

伯林蝋人形館 (文春文庫)

伯林蝋人形館

  • 皆川博子著
  • 文藝春秋(文春文庫)
  • 2009/08/04
  • 文庫

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